食道・胃の病気
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは胃酸が食道へ逆流し食道の粘膜が傷ついて炎症を起こす病気です。胸やけや呑酸(口が酸っぱくなる感じ)の症状を引き起こし、内視鏡でみるとびらん(ただれ)や潰瘍がみられることもあります。
10~20年前まで逆流性食道炎は欧米人に多いが、日本人には少ないと言われていました。しかし近年の食の欧米化が原因で日本人にも増加しきており胃酸の逆流症状が週に2回以上ある人が10~20%いるのではないかと推測されています。
欧米スタイルの食事は脂肪分が多く胃での消化に時間がかかりその停滞時間が長くなります。そのために胃酸が多く出るため逆流しやすくなるといわれています。
逆流性食道炎はいろんな年齢の方に見られますが、中年の太った男性や御高齢の女性、食道裂孔ヘルニアのある方にも多くみられます。
中年の太った男性は内臓脂肪が増えると胃が圧迫されて逆流が起こりやすく、御高齢の女性は骨粗鬆症が原因で背中が曲がり、胃酸逆流が起こりやすくなるからです。
当院では食生活の改善を指導し、改善がなければ胃酸の分泌を抑える薬(H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害剤)を用います。
ヘリコバクターピロリ感染症
ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)は胃の粘膜に住みつき、そこに炎症をおこす細菌です。胃の中は胃酸によって非常に強い酸性に保たれ普通の細菌は生きていけませんが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を使って胃粘膜に含まれる尿素を分解し、自らアンモニアを作り出すことで自分の周りを中和して生存することができます。
ピロリ菌は主に口から侵入し、幼少期に感染するといわれています。自然界にはほとんど存在せず感染者の胃の中にだけ存在するため何らかの形(口移しの食事や嘔吐等)で経口感染することが推測されています。感染すると組織学的な胃の炎症が起こります。炎症が持続すると胃や十二指腸の潰瘍、胃がんが発症しやすくなります。
このような疾患の原因となることが判明したため現在は、保険診療で除菌ができるようになりました。抗菌薬2種類と胃酸を抑える薬の3剤を1週間服用します。成功率は1次除菌が70~80%(ボノプラザンの登場で90%)、失敗すると2次除菌を行いますが、その成功率は90~95%とされています。
除菌は薬による治療ですので副作用がでることもあります。軟便、下痢、味覚異常といった比較的軽い副作用が多いのですが、稀に出血性腸炎等を引き起こすこともあります。ペニシリンアレルギーの方は担当医に相談する必要があります。
又副作用ではありませんが、除菌が成功すると胃酸分泌機能が回復し逆流性食道炎の症状がでることもあります。しかしほとんどが一過性のものですのであまり心配する必要はありません。当院では開業後に現在900例の除菌を実施しています。
胃がん
胃がんは、胃の粘膜にある細胞が、何らかの原因でがん化して発生します。がんの種類別の死亡者数は男性で第2位、女性で第3位と報告されています。
このようなデータを見ると治りにくいがんと思うかもしれませんが、胃がんは早期に見つかれば95%以上が治癒するといわれている治療成績のよいがんでもあります。
ただし早期の段階では自覚症状は出にくいので、早期発見、早期治療のためには、たとえ症状がなくても定期的に内視鏡検査を受けることが非常に重要です。
病期は、胃がんが胃の壁の中にどのくらい深くもぐっているのか(深達度)、リンパ節や他の臓器への転移があるかどうかによって決まり、それによって治療法が決まっています。
早期に発見できれば内視鏡治療が行われます。内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection:EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection:ESD)という手技が行われます。
どちらもお腹を切らずに内視鏡で治療しますので入院期間は短く、体への負担は非常に少なくすみます。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシア(functional dyspepsia:FD)は、内視鏡査を受けても胃、十二指腸潰瘍や胃がん等の病気がないのにもかかわらず胃が痛い、胃がもたれるなど様々な胃の症状を訴える病気です。
原因については、胃の運動機能異常(胃の動きが悪い)、内臓の知覚過敏(痛みを感じやすい)、胃酸の分泌異常、ヘリコバクター・ピロリ感染、精神・心理的ストレス、不規則な食事などいろいろな要因が考えられます。
治療は胃酸分泌抑制薬、胃の運動機能改善薬、抗不安薬、漢方薬等を使用します。また最近は機能性ディスペプシアそのものに保険適応のある薬剤も登場しています。またピロリ菌の除菌で改善することもあります。
FDは、様々な要因が関与しているためそれらを念頭に置きながら個々に応じた治療を実施しています。